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Quant Labシリーズ * フラッシュクラッシュ・ラボ 1

再び戻る価値のある、ひとつの考え。
アリゲーター第一段階
本格的なコーディングから20年離れていた。その私が、混乱に満ちた12日間で、ゼロから動くQuant Labをつくった。
きっかけは退屈な出張だった。アイマスクを着けても、頭は休もうとしない。市場の暴落はなぜあれほど激しいのか。なぜ一部の資産ではフラッシュクラッシュが多いのか。「機械的な脆弱性」についての直感を、実験のマトリクスへ変えたくなった。
Agentic AIを使うと、その直感は数万通りのシナリオと、API接続可能な体系的研究エンジンになった。最初の対象がBitcoinで、パニックをじっと待つ戦略だったから、名前は The Alligator にした。
設計は三つの問いから始まる。
- レジーム: 大きな市場構造は崩れたか。
- 脆弱性: レバレッジが集中し、連鎖的に崩れやすくなっているか。
- トリガー: 出来高の急増とともに、価格の下抜けが起きたか。
暴落は物理現象に近い。レバレッジが狭い部屋に押し込まれ、構造的な支えが折れ、マージンコールが自動執行される。アリゲーターは、その機械的な連鎖を待つように設計した。
20年前なら、この直感を数年分のバックテストへ落とすまでに、データ接続、ライブラリとの格闘、行き止まりのデバッグで何週間も費やしていただろう。AIはその摩擦を圧縮した。建玉データが使えなくなっても、同じ経済的シグナルを残せる代替案をすぐに問い、研究の筋を切らずに進められる。
その速さは目が回るほどだった。だから実験のルールがいっそう重要になった。
臓器を外す技術
AIを使った開発の本当の魔法は、自分のアイデアを壊したときに現れた。
長期の市場サイクルを使うゲート。巨大な上昇相場で空売りを止めるBull Veto。複雑な段階的手仕舞い。どれも専門家の直感として自明に思え、取締役会メモにも書けるほど慎重に見えた。
そこで One-Knife Rule を適用した。基準モデルを凍結し、変更する変数は一つだけ。過去データを走らせ、結果を測る。
結果は容赦がなかった。美しい追加機能のいくつかは価値を生まず、システムを悪化させるものまであった。臓器を一つ外すたび、アリゲーターは強くなった。機械は高度な説明に情を持たない。算術が現実を生き残るかだけを見る。
AIは構築と解体を同じように速める。この対称性が大切だ。速くつくるだけなら、未検証の複雑さが積み上がる。隔離した実験を速く回して初めて、速度が学習へ変わる。
人工のエンジニアを率いる
開始から数日後、私は人工エンジニアチームの憲法として AGENTS.md を書いていた。
エージェントは意欲的だ。統制された研究では、その意欲が複数箇所を一度に変え、結果を黙って改善し、人間に「何が効いたのか分からない」という問題を残す。そこで憲法を簡潔にした。
基準モデルを守る。サンドボックスを分離する。一度に使う刃は一つ。都合よく整えた楽観論より、生ログを示す。
私はPythonの文法を学び直していたわけではない。人工チームを経営する方法を学んでいた。
この経験で、技術リーダーシップの意味も変わった。価値があるのは、すべての行を自分で書くことより、意図を明示し、証拠を定義し、権限を絞り、結果を検査し、既知の基準へ戻る道を残す能力だった。
研究所は小さな会社になった。私は投資委員会、プロダクトオーナー、リスク管理責任者を兼ね、ときどき「なぜ自律型の市場捕食者に二要素認証が要るのか」と尋ねる人でもあった。
79Rと人間の暮らし
2019年から2026年まで7年間のデータで、基準となる3R戦略は97回取引し、勝率45%、累積79R、最大ドローダウン10Rだった。
機械学習のブラックボックスは使っていない。未来のラベルを判断へ漏らしてもいない。仕組みは決定論的で、積極的な反証テストにも耐えた。
それでも、紙の上の算術は椅子に座る人間と向き合わなければならない。
平均取引時間は90時間を超えた。ポジションが+2.5Rまで伸びた後、苦しい4日間をかけて反転し、ストップに達することもある。数学上は許容できても、心理的にはつらい。
最後に構造を一つ変えた。価格が+1.5Rへ達したら、ストップを動かして+0.5Rを確保する。
総リターンは79Rから77Rへ下がった。最大ドローダウンは10Rから5.5Rへ半減し、平均取引時間は約60時間になった。
理論上のリターンを少し譲り、人間が続けられる可能性を大きく買った。
ここから、研究所に残るルールが生まれた。
研究は理論上の上限を見つける。執行は、椅子に座る人間のために設計する。
12日で軌道へ
白紙から12日後、アリゲーターは完全な身体を持っていた。取引所インターフェース、ストップ管理、監視機構、ステータスログ、Telegramコックピット、TOTPで保護された緊急停止機能である。
「昔からの市場勘は検証できるだろうか」という問いから、「なぜ自律型の市場捕食者に二要素認証が必要なのか」まで、2週間もかからなかった。
システムが速くなっても、判断の必要性は消えない。判断の方が希少資源になった。データには出所が要る。実験には凍結した基準が要る。本番には制御が要る。バックテストは人間の生活にも耐えなければならない。
驚いたのは、想像と手触りのある現実の距離が一気に縮んだことだ。20年間、本格的なコードから離れていた人間が、紙ナプキンのスケッチから、複数年の証拠、反証テスト、稼働するアーキテクチャまでを12日で進められた。
AIは、私の市場経験と直感に新しいレバレッジを与えた。Quant Labのおかげで、私は再びビルダーになれた。
もう一度、生きていると感じられるのはうれしい。
出典に関する注記
この正本への再収録は、Robinが当初公開した体験を保存するものである。記載した数値は過去の社内実験を表し、現在の運用成績、投資助言、実取引の許可を意味しない。
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