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8秒で10万ドルの差は消える

所有モデルは10万ドル安く見える。だが同じトート搬送シナリオでは、完了1回あたり8秒の追加介入で差額を使い切り得る。
トートを運ぶロボットが途中で止まる。技術者が歩み寄り、エラーを解除し、再び送り出す。派手な事故ではない。デモの見栄えも、サプライヤーの請求額も変わらない。
それでも採算は変わる。
Agility Robotics の投資家向け資料は、実に分かりやすい比較を示している。5年間の顧客支払額は、RaaS が約 50万ドル、継続的なソフトウェアとサポートを含む所有モデルが約 40万ドル。所有モデルの方が10万ドル安く見える。Agility 投資家向け資料
ただし、これは価格差であって、仕事のコスト差ではない。
10万ドルをストップウォッチに換える
元のリサーチでは、両契約に同じ仕事を与えた。Digit 5 を1台、週120時間、5年間運用する。生産稼働率は80%、成功率は98%と仮定し、トートの処理速度を3通り試した。80%と98%はこのシナリオの仮定であり、Digit 5 の実測値ではない。
生産稼働1時間あたり60回を試みるシナリオでは、5年間の成功搬送は 1,467,648回になる。10万ドルの差を同じ分母で割ると、所有モデルの優位は成功1回あたり約 6.8セントだ。
ここで Agility の説明資料が置くもう一つの仮定を使う。福利厚生などを含む人件費は1時間 30.50ドル。この単価なら6.8セントで買える時間は、ほぼ 8秒しかない。
損益分岐の問いはこうなる。
所有モデルがRaaSよりも、合格したトート搬送1回あたり8秒だけ多く人手を必要とすれば、公表価格上の10万ドル差は吸収される。
所有モデルが実際に8秒多く介入を要する、という主張ではない。Agility は両モデルを同じ業務で比較した介入時間を公表していない。8秒とは、公開価格、共通の運用シナリオ、そして同社自身の人件費仮定から計算した境界値である。
処理速度が変われば境界値も動く。1時間30回なら追加の人手を約16秒まで吸収できる。120回なら約4秒だけだ。仕事が速いほど、短い中断の経済的な重みは増す。同じ10万ドルを、より多くの成功搬送で割るからだ。

救援時間は、請求書に載らない費用である
人の介入は細切れなので見えにくい。リセットに20秒、塞がれた経路の処理に2分、安全確認で技術者の午後が消える。ラインが止まれば、複数の人が一緒に待つ。
これらはロボット会社の請求書に載らなくても、倉庫が負担する。
分母に置くべきなのは、予定時間でも納入台数でも開始動作数でもない。停止、失敗、人の救援を差し引いた後に、顧客が受け入れた仕事だ。その隣に介入時間と担当者を記録する。そうしなければ、機械は顧客から人手を借り、その借金を自律性と呼ぶことになる。
厄介な数分を誰が負うかは契約が決める
二つのモデルは、支払時期だけを並べ替えるものではない。Agility の登録届出書によれば、RaaS では同社がロボットを保有し、サブスクリプションに機体、ソフトウェア、継続サポートを含める。同じ書類は、RaaS の大規模な収益性が未実証であり、耐久性、保守、更新率、交換費用に左右されるとも明記する。Agility 登録届出書
つまり、RaaS の高い価格にはリスク移転が含まれている可能性がある。サプライヤーが保守と資産寿命のリスクをより多く負う。所有モデルでは、機体が長持ちすれば顧客の取り分が増える一方、修理、交換、残存価値のリスクも顧客側に残りやすい。公開資料には、両者を揃えた顧客キャッシュフローも、その交換条件を値付けできるだけのサービスデータもない。
したがって10万ドルは、ただの節約額ではない。二つの契約の見える部分にすぎず、見えない仕事は別々の机に届くかもしれない。
パイロットの横に小さな時計を置く
合格したトート搬送ごとに、まず五つだけ記録すればよい。
- 予定時間と実際の生産稼働時間
- 試行回数と合格回数
- 人の介入・復旧に要した秒数
- 介入者の職種と総人件費
- 修理、交換、停止をどちらが負担したか
その上で、同じ業務、同じ受入基準で RaaS と所有モデルを比べる。一方はサプライヤー支援込み、もう一方は顧客エンジニアの時間を黙って使う、という比較は避ける。
8秒は予測ではない。小さな懐中電灯だ。分母が約150万回の成功搬送になると、わずかな隠れ人件費が6桁の価格差に並び得ることを照らす。
最安のロボット契約が、最良の選択である可能性は残る。ただし最後の台帳には、トートと故障だけでなく、倉庫を横切って救援に来た人も同じページに載せなければならない。